はじめに

私は、約十年前に「初心者でもわかる!バイオインフォマティクス入門―やさしいUNIX操作から遺伝子・タンパク質解析まで」と題した本を書きました。表紙などにある若葉マークが印象的なため、「若葉本」とその筋の人たちには呼ばれています。2001年の秋から1年間、羊土社刊の「Bioベンチャー」誌に創刊号から連載させていただいた、ぼうのうによる「バイオインフォマティクス入門」の連載記事を纏めて加筆した本です。とくに第2章「必要なコンピュータ環境を作ろう」、第4章「最新の研究をのぞいてみよう」は完全に書き下ろしです。情報科学方面から参入しようとしている方には生物学者に対する間違った認識による行き違いのないように、とくに第1章4節「バイオインフォマティクスと情報科学」の一読をお勧めします。 ぼうのうがよく周りから訊かれること、普段から考えていることを文章にした本で、また本にすることによって考えがまとまり非常にすっきりしました。本当にいい経験をさせてもらい、また周りの人にも自信を持って勧めれる本になったのでいうことなしでした。[amazon asin=489706290X&template=thumbnail]

それと同時に海外でも使われているBioinformaticsの教科書の翻訳、監訳にもたずさわり、バイオインフォマティクスが日本で普及することに加担してきたつもりです。とくに、Cold Spring Harbor Pressから出ているBioinformaticsは、Mountさんが著された本なので、「Mount本」と呼ばれています。日本語訳は 「バイオインフォマティクス ゲノム配列から機能解析へ」 岡崎康司、坊農秀雅 監訳 メディカルサイエンスインターナショナル で、見ての通り私も監訳、ならびに 第一版では第3章「対にした配列のアラインメント」、第二版では第3章 「対にした配列のアラインメント」と第4章「配列アラインメントの確率的、統計的解析入門」の翻訳もやりました。それぐらいこの本にほれ込んで日本語化したにはわけがありました。 当時、生物科学者むけのいいバイオインフォマティクスの本がなかったことです。我々が2001年の5月にCold Spring Harbor Laboratoryに学会(Genome Sequencing and Biology)でいった頃にちょうどCold Spring Harbor Pressからこの本が出版され、この研究所の本屋に並んでいたこの本が学会の終わりの頃にはすでに売り切れるぐらいの人気でした。 使う側から書かれた初めてのバイオインフォマティクス本でもありました。いくつか完全でない記述やわかりづらいところがあるのですが、やはり使う側の立場に立っているので、「使ってもらう側の思い入れ」がありません。これはとても重要な話です。[amazon asin=4895924262&template=thumbnail] さらに、5年ほど前からライフサイエンス統合データベースセンター(DBCLS: Database Center for LifeScience)という生命科学分野のデータベースをより「使える」ようにするための研究センターに自ら異動し、これまで草の根でやってきた上記のような広報普及宣伝活動を本業とするようになりました。統合TVという動画でバイオインフォマティクス関係のデータベースやウェブツールを紹介するサイトを立ち上げ、多くのアルバイトの学生さんの助力もあっていまでは多くのツールのコンテンツが揃っています。統合TVのようなオンライン上の活動のみならず、オフラインにも統合データベース講習会(AJACS)という形で日本各地で講習会を行ってまいりました。

それでもまだ生命科学者は「バイオインフォマティクス」に苦しめられているようです。そういう人達の一助となるように、これまでであれば本として出版する内容を、ブログとして書き記していくことにしました。皆さんの目に触れるようにするにはどうしたらいいか、考えぬいた挙句の結論です。皆さんのご意見お待ちしています。

概念的なまとめを書いたいわゆる「薄い本」パートと、「データ解析プロトコル」パートに分けてどんどん文書化していこうと思っています。後者は日進月歩で紹介しているDBやツールがどんどん改善(時には改悪)され、紙媒体での配布はキケンなのでオンライン版としてのみ公開して常に最新になるようにしたいと思っています。


Written by bonohu in misc on 日 07 4月 2013.