Houston, we have a narrative
なぜ科学はストーリーを必要としているのか
2018/11/10-11/14に参加したアメリカ昆虫学会の年会。 そのkeynote speech speaker、Randy Olsonさんの著作、やっと完読。
研究者は学会発表のための抄録をはじめとして文章を頻繁に書き、読む人に自分の発見や考えを伝える必要がある。 それらの書き方は場数を踏んで自然と身につけてきている。 現在では、論文に関してはIntroduction,Method,Result and Discussion (IMRAD)という文章構成がほぼ使われるようになっている。 しかし、事実だけを列挙する文章や、否定語で流れを振り回す文章が散見されるのが実態で、その専門家であるおかげでなんとか言いたいことが伝わっているのが現状であろう。 そこで、And-But-Thereforeで文章を組み立て、「ストーリー」を作るABTが本書で提唱され、それを中心とした詳細が説かれている。 単純な私は早速これに影響されて、日常的な書き物をはじめとしてこのぼうのブログを書く際にも意識するようになっている。
ABTに関する記述だけかと思ったが、それは広く科学コミュニケーションに関する話題にまで波及していた。 ちょっと考えればその通りなのだが、科学者にとっては予算獲得にもかかわり、とても大事なことである。 また、「ストーリーを作る」ということに対する反論もバッチリ書かれていて、一読に値するかと。 日本語に翻訳をしていただき、ありがとうございました。
気になった部分をいくつか。
p297真ん中あたり
四六歳位なってからやるよりは、若いうちに始めたほうが、ずっと簡単に、より良く身につく
皮肉にも今年この年齢になる私であるが、
p211最後の段落から
物語の力は簡単にすぐやってくるわけではないということだ。要するに、結果は何かを費やしてこそ得られるものなのだ。
これから精進して頑張っていきたい。
原著はこちら。
補遺2 物語の用語集だが、「ストーリー・サークル」の説明が、「ストーリーのサイクル」(p180)のそれになっているような。