VariantRecipe chapters

バリアントレシピ本の章立て

今回出版する「バリアントデータ検索&活用 変異・多型情報を使いこなす達人レシピ」は、その第一報と同時にAmazonでのエントリのみならず、出版社(羊土社)のウェブページも公開された。

バリアントレシピ本

ここにもその章立てを紹介し、編集した意図を簡単に紹介しておく。

  1. バリアントデータを検索する(世界)
    • (1)興味ある遺伝子の数塩基多型・構造多型を調べる 〜dbSNP,dbVar
    • (2)興味あるゲノム領域にみられるバリアントを調べる 〜gnomAD(ノマド)
      • [COLUMN]ヒト以外のバリアント情報の検索と比較
    • (3)Pathogenic なバリアントを調べる 〜ClinVar
      • [COLUMN]OMIMとNCBI 〜疾患関連のリソース
    • (4)アクセス制限されたデータベースから,興味あるバリアントを保有するデータを探索・利用する 〜GA4GH Beacon とNBDC ヒトデータベース
    • (5)病名・遺伝子名・バリアントのID などから検索してGWAS の知見を活用する 〜GWAS catalog
    • (6)症状から検索して類似の稀少・遺伝性疾患を探し,未知バリアントを評価する 〜PubCaseFinder
      • [COLUMN]今日から使える論文執筆支援サービス
  2. バリアントデータを検索する(日本人)
    • (1)日本人集団におけるバリアントの頻度情報を調べる 〜TogoVar ①
    • (2)バリアントの詳細情報を調べる 〜TogoVar ②
    • (3)日本人と日本人以外の集団のバリアント頻度を比較する 〜TogoVar ③
      • [COLUMN]コンピューターインフラとResource Description Framework(RDF)
    • (4)個人レベルのバリアント情報を活用する 〜Japanese Genotype-phenotype Archive(JGA)
      • [COLUMN]dbGaP,EGA
    • (5)多層オミクス情報と紐付いたバリアント情報を活用する 〜jMorp
      • [COLUMN]日本人のゲノム解析には日本人基準ゲノム配列JG1を
    • (6)エピゲノム・遺伝子発現情報と紐付いたバリアント情報を活用する 〜iMETHYL
      • [COLUMN]ddbj/human-reseq:再現性のあるバリアント検出ワークフローの開発
  3. がんの体細胞変異を検索する
    • (1)興味あるバリアントのpathogenicity,構造や治療に与える影響などを調べる 〜COSMIC/COSMIC-3D,CIViC
    • (2)興味あるバリアントのがん種ごとの頻度の違いを調べる 〜TCGAとcBioPortal
    • (3)興味あるがん種に特徴的なバリアントを調べる 〜TCGA とGDC-DP,COSMIC

章立てを見ての通り、「バリアントデータを検索する」ことが中心に構成されている。 1章で世界中にあるバリアントデータ、2章で日本人のバリアントデータに関してそのデータ検索手法を紹介しており、 それらの多くは、生殖細胞系(germ line)のバリアントに関するものなので、3章でそれとは異なる癌細胞で見られる体細胞変異に関してそのデータの検索に関して紹介する形になっている。 バリアントデータに特化して書かれた日本語の本はおそらく初めてで、良い本に仕上がったと思っている。

章立てを見て気づくと思うが、この本のハイライトは2章のTogoVarであり、3つの稿からTogoVarが紹介されている。 TogoVar(トーゴーバーと読む)とは、日本人のバリアントデータを統合し、海外のリソースも合わせて統合して比較解析ができるようになっている素晴らしいサイトである。 そのTogoVarに統合されている日本人のバリアントデータのリソース(データベース)を維持管理されている方々にそれに続く形で2章に書いていただいた。 誰でも使える形で公開されている日本人のバリアントデータを利用するための初の指南本ともなっているのも売りの一つである。 実はそのようなデータをもっと使われるように日本語の本を出そうとしたことが、本書を企画した一番の原動力でもあった。

最後に蛇足ながら他書との被りに関して補足しておく。 1章の一部のツールは統合TV本の後半で紹介したgnomADやClinVar、GWAS Catalogは同じものが紹介されているが、執筆してもらう人は異なるので、また違う視点からの紹介となっている。 それは第3章のTCGAとCOSMICに関しても同様である。 そういうわけなので、安心してAmazon出版社(羊土社)のウェブページで購入予約してください!


Written by Hidemasa Bono in RecipeBook on 土 12 9月 2020.