What is BioRxiv

BioRxivとは何か

BioRxivにアップした論文をポスター発表していたら意外な質問が。

「このBioRxivって何ですか?」

そもそも読み方からして知られていない。「バイオアーカイブ」と読む。Rxivのxは「エックス」でなく、「カイ二乗検定」のχ(カイ)。それで「アーカイブ」と読む。なお、アーカイブの本来の綴りはarchive

そしてこれは、一体全体何なのか、だが。 新たなる論文誌ではなく、preprint(プレプリント)と呼ばれるものである。 論文として査読に出す前に論文をpreprint serverと呼ばれるウェブサイトにアップロードすることで公開する仕組み、なのだ。

詳しくは2017年10月に、第2回 SPARC Japan セミナー2017 (オープンアクセス・サミット2017)「プレプリントとオープンアクセス」というセミナーをオーガナイズさせていただいたので、そちらの資料が参考(PDF)になると思うが、かいつまんで私のイメージを以下に。

物理学の一部の分野では昔からこの仕組みが採用され、本家arXivに論文をアップすることで研究者同士が論文を共有してきた。 特に情報科学関係の研究においてこのarXivに論文がアップされ、非常に激しい勢いで研究が進む「土壌」を提供したと、同じくSPARC JAPANセミナーの2016年度 第3回 「科学的知識創成の新たな標準基盤へ向けて : オープンサイエンス再考」での国立情報学研究所の北本朝展先生から聞いたことがある。 講演資料PDF7ページ目からの「2-3.arXiv の利用」の節にそれが詳しく書かれているので参考に。

生命科学分野でもこれに倣い、BioRxivがCold Spring Harbor Laboratory Pressによって立ち上げられ、ここ数年で急速に広まりつつある。 すなわち、査読誌に論文を投稿する前に、まずはBioRxivにアーカイブしてから、というスタイルが生命科学分野でも普及しつつあるようだ。 そうすることで論文に書かれたアイデアの先取性を担保したり、その研究に関して広く、そして素早く研究コミュニティーに知ってもらえるという利点が考えられる。 「そんなの公開したら論文として投稿できなくなるのでは?」と考えるかもしれない。多くの査読誌でこのBioRxivへのアップロードやこちらにアップした論文の投稿を認めるようになってきている。もちろん、全ての論文誌でそうなっているわけではないので、自分の出したい論文誌がある場合には要注意であるが。

以下の写真は、Cold Spring Harbor Laboratory Meetingに参加した際にいただいたBioRxiv Tシャツとステッカーである。

BioRxiv T-shirts and sticker

私も2018年8月末時点で自ら一本BioRxivにアップロードした。

Meta-analysis of hypoxic transcriptomes from public databases Hidemasa Bono bioRxiv 267310; doi: https://doi.org/10.1101/267310

そうするとその論文にはDOI(Digital Object Identifier)が付与され(上記の例だとhttps://doi.org/10.1101/267310)、論文をそのDOIで引用することができる。 何もドライな研究メインの私だけでなく、ウェットな研究をメインにしている私の共同研究者もすでにBioRxivに論文をアップしている。 以下の論文がそれだ。

In renal cell carcinoma, cancerous phenotypes linked to hypoxia-inducible factors are insensitive to the volatile anesthetic isoflurane Chisato Sumi, Yoshiyuki Matsuo, Teppei Iwai, Hidemasa Bono, Kiichi Hirota bioRxiv 375311; doi: https://doi.org/10.1101/375311

早めに公開される仕組みがこのように確立され、みんなが使うようになってきた。 これをより多くの研究者が利用し、科学の進展がさらにスピードアップするといいな、と。 そう願っている。


Written by Hidemasa Bono in misc on 土 15 9月 2018.